サーマルカメラとは
物体の温度を色別に分布した熱画像として視覚化したものをサーモグラフィといいます。
このサーモグラフィを取得するための機能を搭載した装置をサーマルカメラ(サーモグラフィカメラ)と呼びます。
一般的に熱画像は高温部を赤く、低温部を青く表示します。
サーマルカメラのしくみ
熱を持つすべての物体は赤外線という見えない電磁波を放射しています。赤外線の放射線量は物質の温度に比例する特性があり、高温の場合は大きく、低温では小さくなります。サーマルカメラは赤外線を検知するセンサーによって放射線量を測り、対象物の温度を数値化すると同時に、赤〜青のグラデーションで熱画像として可視化します。
サーマルカメラの利用シーン
赤外線による熱画像は、熱伝達における多くの潜在的な欠陥や問題点を指摘できる高度な技術です。
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非接触の温度管理
対象に接触することなく温度測定が可能です。そのため、サーマル温度計は金属加工における温度管理や生産ラインの異常検知などに最適です。
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電気設備の監視
電気設備の発熱過負荷または過熱した回路を特定したり、モーター ベアリングが故障している可能性があるかどうかを特定きるため、物的損害や人的損害を引き起こす前に、故障した電気部品を修復できます。
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屋外での探索・監視
サーマルカメラならば暗闇の中でも熱による識別が可能なので、夜行性の野生動物でも生態調査が容易に行えます。また光源の確保が望めない湾岸や沿岸の監視・パトロールにも威力を発揮します。
- 4
建造物の診断
温度変化を視覚化することによって、建物の漏水箇所の特定や暖房効率の監視、空気の漏れなどなど隠れた問題を見つけ出します。
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コンクリート内部の状態検査
サーマルカメラでコンクリートの表面温度を計測し、温度分布状況から内部の鉄筋腐食状況の推定、空洞の位置特定が可能です。
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発熱者の検知
発熱の監視を通じて体温の上昇を検出できます。スクリーニングソフトウェアと連携することによって指定された建物内の何百人もの通勤者、乗客、従業員、および訪問者を即座にスキャンできます。
サーマルカメラの種類
サーマルカメラには測定対象や機能の違いによって様々な種類があります。どのような目的に使用するか、どのような機能・精度が必要かしっかりと確認して、最適な機種を選びましょう。
サーマル温度計Infrared Thermometer
サーモグラフィ温度計、赤外線温度計とも呼ばれます。測定対象の温度(数値)と熱画像を表示します。電気設備の保守、金属加工の温度管理、ソーラーパネルのホットスポット検知、土木インフラの点検などで活用されています。
ハンドヘルドサーモグラフィ
ハンディタイプの非接触温度計です。
対象にかざすだけの手軽さと、高い精度、幅広い測定温度範囲で多くの企業が導入をはじめています。
機能・性能によって10万円台〜700万円台まで幅広い価格帯と製品ラインナップがあります。
コンパクトサーモグラフィ
スマートフォンのようなデザインのサーマル温度計。ポケットに入るコンパクトサイズで場所を選ばない手軽さが魅力です。
スクリーニングカメラ
主に人間の体表面温度の測定を目的としたサーマル温度計です。測定対象が人間なので温度範囲は広くありませんが、移動時でも体温を確実に測定するため、多くの製品が高フレームレートとなっています。
監視カメラ
固定して温度監視を行うサーマルカメラです。多くはネットワーク接続による遠隔監視が可能で、温度異常を検知するとアラームで知らせる機能をもっています。小型で設置しやすいコンパクトなものや、1500℃までの測定範囲を持つ大型のものまでさまざまなタイプがあります。
スマートフォン用サーマルカメラ
スマートフォンやタブレットなどデバイスにある外部インターフェース(USB・Lightning)に接続することで、デバイスに熱画像を表示させ、画像や動画を撮影・保存・共有することができます。利用には専用アプリのインストールが必須です。
サーマルスコープThermal Scope
熱源の探索や監視を目的とした光学機器です。
サーマル温度計と異なりより遠くの対象物を検出するため、優れたズーム機能や、大型で高性能の対物レンズを備えた製品が多くあります。
サーマル単眼・双眼鏡
サーモグラフィ機能を備えた単眼鏡・双眼鏡です。アニマルウォッチ、ハンティング、防犯、海洋監視など幅広い用途から人気が高まっています。使用シーンはアウトドアが多いため、防塵防水性に優れ、稼働時間の長い製品が多くあります。
サーマルライフルスコープ
ライフルに取り付けるサーマルスコープです。森の茂みや夜間のターゲット捕捉が容易にできるため、、ハンティングやサバイバルゲームに用いられます。
スコープサーマルアタッチメント
通常のデイスコープにサーモグラフィ機能を付加するためのアタッチメントです。拡大倍率は等倍(デイスコープに依存する)のものや単独でズーム機能を備えたモデルがあります。
サーマル温度計の選び方
測定温度範囲
ハンドヘルドサーモグラフィの温度範囲は低温が-20℃程度、高温は400〜650℃までが一般的ですが、オプションで2000℃の高温まで測定可能なものもあります。
センサースペックと精度
【検出器解像】:鮮明に画像を表示できるかという基準です。
【ピクセルピッチ】:画面を構成する微細な点の物理的な大きさのことでディスプレイ装置の表示の精細さを表す指標。このピクセルピッチが小さいほど、解像度が高くなります。
【NETD(Noise Equivalent Temperature Difference)】:どれだけ細かい温度差を見分けられるかの指標です。
【測定精度(正確さ)】:多くの製品は黒体に比して±2℃あるいは2%程度の誤差で計測可能です。精度を保証するためには放射率や距離、反射温度、温湿度のパラメータ設定が必要です。精細な画像と高精度な測定をするためには、これらの数値の優れた製品を選ぶことが重要です。
画像モード
多くのサーマル温度計には見え方の異なる複数の画像モードが装備されており、可視光イメージ(通常の見え方)や画像の上に画像を重ねるピクチャーインピクチャー、可視光イメージと熱画像を重ね合わせて表示するフュージョンなどがあります。
測定対象の追加
サーマル温度計の画角内に測定対象を追加できる製品があります。スタイルはポイント(点)・ライン(線)・エリア(範囲)が一般的で、同時に複数箇所の温度を表示できるので、様々なパターンの測定が可能です。追加の可否および最大追加数は製品によって異なります。
サーマルスコープの選び方
サーマル温度計と同様にセンサースペックと精度はサーマルスコープを選択するうえでも、とても重要な要素です。
フレームレート
サーマルカメラのフレームレート(フレッシュレート)とは、1秒間に映像の切り替わりを最大何フレーム処理できるかを示す数値です。 50Hzの場合、1秒間に切替処理できる最大処理数は50フレームになります。 この数値が大きいほど、滑らかな動きを再現できることになります。
拡大倍率と測距
単眼・双眼鏡やライフルスコープの多くにズーム機能が備わっています。このズームの拡大倍率によって目標の検出距離が異なります。 また不可視レーザーによってターゲットまでの距離を表示できるレンジファインダー機能もあります。
カラーパレット
熱画像の配色パターンを切替える機能がカラーパレットです。高温が赤、低温が青い通常のカラーや高温部のみ白く強調するホワイトホット、高温部を黒く表示するブラックホットなどが代表的です。メーカーによってネーミングや配色は異なります。